漫画『しんきらり』『性悪猫』やまだ紫

12:45 am みるきくよむ

1980〜1990年頃にかけて、個人的に視聴覚暗黒時代を迎えていたので(高校時代はバスケ部、大学時代はスキーサークルと酒盛りに命を賭けていた)、今年5月5日に亡くなられるまで、正直やまだ紫さんのお名前も存じ上げなかったのですが、マイミクさんが「『性悪猫』は今でも心に残っている」と日記に書いているのを目にして、俄然興味が出て図書館で借りてみました。

『しんきらり』は、ふんふんそうだよねぇと読んでいると、各話の最後に横っ面を張られるというか、ちゃぶ台を引っくり返されるというか、主婦の日常を淡々と描いている風でいて、ものすごくコワイ作品でした。
冒頭の、河野裕子の歌集からの引用『菜の花』がまた凄みがあって、ものすごい相乗効果。
うん、日常には鬼が潜むね。 ←とか言ってるとまた横っ面を張られそう

『性悪猫』は、ついつい猫にまるっきり感情移入して読んでしまいました。
コマ割りのリズムや言葉の響きが、新鮮だけれども自然な感じで、スッと入っていける。そして、

砂袋みたいに 抱いていてよ / 梅雨

のくだりで、ああ、抱っこしてもらえたんだ、良かったなぁ……と、知らず知らずのうちに涙が出ていて、自分でもビックリしました。

うーん、これはぜひ手元に置いておきたい漫画だなぁ。
でも、現在入手できそうなのは、いずれも文庫の中古のみ。
漫画はそもそも文庫サイズに縮小することを考慮しては描かれていないと思うので、大切な作品はやはり単行本サイズで蔵書に入れておきたいもんです。

そして、自分で持っていたいのももちろんだけど、いろんな人の感想が聞きたい。
たとえば、図書館の漫画本コーナーに『しんきらり』とか『性悪猫』とかいうタイトルが並んでいたら、おや、これは何だろうと思って手に取りませんか?
そんな、一見さんの心をかっさらうだけのポテンシャルを持っている作品だと思うのです。
横浜市立図書館18館に1冊2冊しかなくて、予約待ち・取り寄せしないと読めないような扱いのままにしておくのは本当にもったいない。

ちなみにeBookJapanで手っ取り早くやまだ作品を立ち読み・購入できますが、Macには対応してないんだイーブックジャパン。ちっ。

ご主人である元ガロ副編集長の白取千夏雄さんが、「やまだ作品を後世に残す!」と決意を新たにされているので、もうホント切実にお待ちしてます!!!
■追記:2009年12月、小学館クリエイティブより『性悪猫』『しんきらり』『ゆらりうす色』の3冊が復刻されました。詳しくは(株)小学館クリエイティブ「復刻名作漫画」やまだ紫のページをご覧ください。
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余談ですが、『しんきらり』に出てくる夫婦の描写におや、と思ったのでメモ的に。

タバコ吸ってるダンナが、奥さんに「灰皿と爪切り持ってきて」と声を掛ける。
ベランダで洗濯物を干している奥さんに、ダンナが「テレビのチャンネル変えて」と声を掛ける。

我が家ではもちろんこういう光景は皆無だし(なぜならば俺の方が偉いからな!)、ヨシオとスズコ(実父母、現在70代前半)もこういうのやってるのを見たことないので(ヨシオが自分で全部やる、まぁ彼は良くも悪くも超自己中で、無言で好き勝手やるヒトなのであんま指標にならない)、こういうメンタリティってアリ?と巨匠(夫)に訊きましたら、巨匠の親は基本的にそんな感じだったらしい。
やまださんは私より18歳上で、ちょうど団塊世代の方なんですけども、世代の差ってけっこうオソロシイなーと思ったことでした。

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